
煮物や照り焼きなど、和食に欠かせない「みりん」。
でも実は、「本みりん」「みりん風調味料」「発酵調味料」の違いが分かりづらく、どれを買えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「みりんとは何か?」という基本から、種類の違い、選び方、おすすめ商品、そして料理での使い方まで、フードコーディネーター目線で分かりやすく解説します。
今回の記事では、みりんの役割や上手な活用方法以外にも、おすすめのみりん5選もご紹介します!
みりんとは?
みりんとは、和食を中心とした日本料理に使われる、甘みと深み、そして風味を加える発酵調味料です。
原料には主に「もち米」「米麹」「焼酎または醸造アルコール」が使われます。約14%のアルコール分を含む本みりんは、酒税法により「酒類」に分類されています。
みりんの特徴は、ただ甘いだけでなく、旨み成分(アミノ酸や有機酸)や複雑な糖分(ブドウ糖・オリゴ糖など)を含んでいる点です。
これにより、料理に自然な甘さとコク、そして美しい照りを加えてくれます。
また、アルコールには食材の臭みを消したり、味の染み込みを良くする効果があるため、単なる甘味料以上の働きをしてくれます。
みりんの役割り
みりんは単なる甘味料ではなく、料理を美味しくするための重要な役割が5つあります。和食に欠かせないみりんの役割りを押さえておきましょう。
まろやかな甘みを出す
みりんは複数の糖類で作られる「多糖類」という調味料です。ショ糖が主成分の上白糖に比べて、料理が複雑でまろやかな甘みに仕上がります。
照り・ツヤを出す
みりんに含まれる複数の糖類は、食材の表面に膜を作ることで照りやツヤを出す効果もあります。
コク・旨味を引き出す
もち米や麹由来のアミノ酸や複数の糖類の働きによってコクが出たり素材の旨味を引き出す効果があります。
食材の臭みを消す
みりんに含まれているアルコールが加熱時に蒸発することで、肉や魚などの臭みを消す働きがあります。
煮崩れを防ぐ
糖分とアルコールが素材の煮崩れを防ぎます。
煮崩れを防ぐということは、見た目の良さだけでなく、崩れた断面から食材の旨み成分を逃さないという効果もあります。
本みりん・みりん風調味料・発酵調味料の違い

現在、スーパーなどで手に入る「みりん」には以下の3種類があります。
種類 | アルコール | 原材料 | 特徴 |
---|---|---|---|
本みりん | 約14% | もち米、米麹、焼酎 | コク・照り・うまみが強い |
みりん風調味料 | 1%未満 | 水あめ、米発酵調味料など | 甘さ中心、安価、風味はやや劣る |
発酵調味料 | 約8~13% | 米・塩・糖類など | 業務用向けが多い、塩分含む |
本みりんは、もち米と米麹、焼酎を使って約2か月以上熟成発酵させた本格的な調味料です。
みりん風調味料は、アルコールをほとんど含まず(水あめや酸味料などを使用)、風味や甘さを模して作られたノンアルコールタイプの代替品です。価格が安く日常使いしやすい一方で、本みりんと比べるとコクや照りがやや物足りないこともあります。
発酵調味料は、原材料に米や糖類、塩などを使い、独自の発酵工程で作られた業務用寄りの調味料です。アルコールは含みますが、塩分も含まれているため、みりんとまったく同じようには使えない場合があります。
みりんは酒類・みりん風調味料は食品に分類
みりん風調味料が本みりんより安くなる理由は、酒税も関係しています。
本みりんにはアルコールが14%前後含まれていて、混成酒類という酒類に分類されているため酒税がかかり、その分価格が高くなります。



以外と知られていないかもしれませんが、本みりんは酒類に分類されるため、未成年は購入することができないんですよ!
みりん風調味料や発酵調味料が生まれた理由



昔ながらの製法で作られているのは「本みりん」です。でも、本みりん以外の「みりん風調味料」や「発酵調味料」がどうして生まれたのか、ご存じですか?
本みりんは、もち米と米麹、焼酎を使ってじっくり熟成させるため、製造に時間とコストがかかります。
一方で、もっと手軽に安く使いたいというニーズや、アルコールを控えたい場面も多くあります。そこで、アルコール分を抑えた「みりん風調味料」や、業務用に使いやすい「発酵調味料」が登場しました。
「みりん風調味料」はアルコールをほとんど含まず、価格が安いため日常使いに便利です。また、子どもがいる家庭やアルコールに敏感な方がいる場合、本みりんのアルコールが気になることもありますよね。そんなときに便利なのが、アルコール分がほとんどない「みりん風調味料」です。ただし、本みりんに比べるとコクや照りの深みは控えめです。
「発酵調味料」は塩分を含み保存性が高いのが特徴。発酵による旨みが強く、少量で味が決まりやすいため、コストパフォーマンスの面で業務用や大量調理に適しています。
それぞれの特徴を理解して、料理や用途に合わせて使い分けると良いでしょう。
みりんと砂糖の違いとは?
料理に甘みを加える調味料として、みりんと砂糖はよく使われますが、その役割や仕上がりには意外と違いがあります。どちらも甘みを与えますが、みりんは甘さだけでなくコクや照り、風味もプラスしてくれる万能選手です。ここで両者の特徴を比べてみましょう。
比較項目 | 本みりん | 砂糖 |
---|---|---|
甘み | 自然な甘さ (ブドウ糖・オリゴ糖など) | 強くてストレートな甘さ |
コク・うま味 | あり(有機酸・アミノ酸など) | なし |
照り・ツヤ | 出やすい | 出にくい |
アルコール | 含む | 含まない |
本みりんを砂糖の代わりに使うときの分量とコツ
砂糖とみりんの役割は違いますが、もし代用するなら、砂糖と同じ甘さに仕上げるにはみりんは砂糖の3倍の重量が必要になります。
砂糖とみりんの比重は異なるので、体積にすると砂糖大さじ1に対してみりん大さじ1.5という分量になります。その分水分が多くなってしまうので、注意が必要です。
本みりんにはアルコールが含まれているため、子どもやアルコールに弱い方がいる場合は使用量や加熱時間に注意しましょう。アルコールを飛ばす「煮切りみりん」にすることで、安心して使えます。
本みりんと砂糖を一緒に使うときの順番
一般的には、砂糖を先に加え、その後に本みりんを加えるのがおすすめです。
砂糖は溶けにくいため、早めに入れてしっかり溶かし全体に甘みを広げる必要があります。一方で、本みりんは加熱すると照りや風味が引き立つため、最後に加えて仕上げることで料理に美しいツヤと深いコクを与えます。
この順番で調理すると、甘さが均一に行き渡り、見た目も味わいもぐっと良くなります。
みりんと料理酒の違いとは?
みりんは甘みが特徴で、料理に照りやコクをプラスします。
料理酒は甘みが少なく、主に料理の臭みを抑えたり、風味を整えるために使われます。
項目 | みりん | 料理酒 |
---|---|---|
主な原料 | もち米、米麹、焼酎 | 米、米麹、醸造アルコール |
アルコール度数 | 約14〜15%(本みりん) | 約14〜15% |
味わい | 甘みがあり、照りやコクを加える | 塩気や酸味はなく旨味を引き立てる |
使い方 | 煮物や照り焼きなど、甘みやツヤを出したい料理に | 臭み消しや風味付け、酒蒸しなどに |
甘み | あり(自然な甘み) | ほとんどなし |
用途に合わせて使い分けると、より美味しい仕上がりになりますよ。
みりんの選び方ポイント
みりんにはいくつかの種類がありますが、ここからは特に「本みりん」を選ぶときのポイントに絞ってご紹介します。料理の味わいや仕上がりに大きく影響するので、しっかり押さえておきましょう。
1. 原材料をチェックする
本みりんは、伝統的な製法で「もち米」「米麹」「焼酎」のみを使ってじっくり熟成させて作られています。そのため、化学調味料や香料などの添加物は基本的に含まれていません。シンプルな原材料だからこそ、自然な旨みや深いコクが生まれ、料理に上品な甘みと照りを与えてくれます。
ただし、商品によっては風味や保存性を高めるために微量の添加物が使われることもあります。気になる方は、購入時に原材料表示を確認してみてくださいね。
2. 熟成期間を確認する
本みりんは熟成期間が長いほど、深みのある味と豊かな香りが生まれます。
熟成期間は一般的に2か月〜3年程度で、短期熟成タイプは2〜3か月で仕上げられ、手軽に使いやすいのが特徴です。一方、1年以上熟成された本みりんは、まろやかで複雑な風味があります。
熟成の進んだ本みりんは「飲むみりん」として食前酒に用いられることもあり、古くから祝いの席などでも楽しまれてきました。
特に2~3年以上熟成されたみりんは、ただ料理に使うだけでなく、素材そのものとしての魅力を持ちます。味噌や醤油のように「熟成」が品質を左右する本格調味料なのです。
用途や予算に合わせて選びましょう。
3. 産地や土地柄にも注目してみる
本みりんの味わいや香りは、使われるもち米や米麹の産地によって大きく変わります。特に伝統ある産地では、気候や水質が原料の質に影響し、独特の深いコクや豊かな風味が育まれています。
料理に個性を出したいときや地域の伝統を味わいたいときには、産地にこだわった本みりんを選ぶのがおすすめです。
フードコーディネーターが選ぶ!おすすめの本みりん5選
みりんは料理に使う量が少ない調味料なので、「ちょっと高いな…」と思っても、実は意外と長持ちします。
だからこそ、少し贅沢して質の良い本みりんを選ぶことで、料理の味わいや照り、コクがぐっと引き立ち、仕上がりに大きな差が出ます!
普段の家庭料理をワンランクアップさせたい方におすすめの、本当に使いやすくて美味しい本みりんを5つ厳選してご紹介します。
福来純 伝統製法熟成本みりん(岐阜県)
【特徴】3年熟成。岐阜県産のもち米・米麹・本格焼酎のみを使い、伝統製法で丁寧に仕上げた本格派みりんです。とろりとした質感で、芳醇な香りと濃厚な甘みが楽しめます。プロの料理人からも高く支持されています。
【おすすめの方】おせちやハレの日の料理に使いたい方、本格的な味わいを家庭料理でも再現したい方にぴったりです。
角谷文治郎商店 有機三州味醂(愛知県)


【特徴】華やかな香りがあり、甘さはやや控えめです。
【おすすめの料理】素材の味を引き立てたいシンプルな煮物や白和えに向いています。
伝統製法 純米本味醂 福みりん 福光屋 3年熟成(石川県)


【特徴】甘さは控えめで、素材の味を活かしながらも料理を優しく包み込むような風味。アルコール度数はしっかりあり、臭み消しや味の染み込み効果も高い
【こんな方におすすめ】甘さ控えめで上質な味わいを求める方
タカラ本みりん 純米 国産米100%


【特徴】国産米100%使用。伝統的な製法で仕込まれた、タカラの純米本みりん。手に入りやすく、安定した品質で、毎日の料理にも使いやすい1本です。クセが少なく、まろやかな甘みとコクがあります。
【おすすめの使い方】煮物、照り焼きなどの定番料理に。普段づかいの定番にぴったり。
本みりん 九重櫻(愛知県)


【特徴】江戸時代から続く伝統の味。蔵元のある三河地方はみりんの本場としても知られています。力強いコクと香りが特長で、料理に奥深さを与えてくれます。しっかりした甘みと芳醇な香り。料理に深みを加える本格派。
【おすすめの使い方】煮物や佃煮、たれなどコクを重視したい料理に。
「煮切りみりん」とは?
煮切りみりんとは、本みりんを加熱してアルコール分を飛ばしたものです。
みりんに含まれるアルコールは加熱することで揮発するため、アルコールの風味や刺激を抑えたい料理には「煮切って」から使うのが適しています。
たとえば、おひたしや酢の物など、火を通さない料理にみりんのコクや甘みだけを加えたいときには、煮切りみりんを使うのがおすすめです。
煮切りみりんの特徴や使い方
- アルコール分がほぼなくなり、甘みやコクが残る
- 子どもやアルコールが苦手な方にも使いやすい
- 加熱しないで食べるタレやドレッシング、マリネ液などにおすすめ



煮切りみりんの作り方は鍋で弱火にかけてアルコールの香りが飛ぶまで数分煮るだけ。
電子レンジ(500Wで30秒〜1分)で手軽に作ることも可能です。


みりんの賞味期限と保存方法
熟成するとおいしくなるという本みりんですが、実際のところ賞味期限はあるのでしょうか?
また、開封後の劣化を防ぎ、風味を長く保つには、適切な保存方法が欠かせません。ここでは、本みりんを最後までおいしく使いきるためのポイントを解説します。
賞味期限の目安
- 本みりん:未開封で1年〜2年程度(商品により異なる)
- 開封後:できるだけ3か月〜半年以内に使い切るのが理想
賞味期限を過ぎてもすぐに劣化するわけではありませんが、風味が落ちていくため、早めに使い切ることをおすすめします。
保存方法のポイント
- 未開封:直射日光・高温多湿を避けて常温保存
- 開封後:しっかり密閉し、冷暗所(夏場は冷蔵庫)で保存
- 長期保存したいとき:冷蔵保存が安心。変色・におい・沈殿物がないか定期的にチェックを
おわりに
本みりんは、ただの甘み調味料ではなく、料理に深いコクと香りを与えてくれる名脇役。
少しこだわるだけで、いつもの家庭料理がグッとプロの味に近づきます。
ぜひ、お気に入りの本みりんを見つけて、料理に取り入れてみてください。

